エディターコラム
サロン専売品と市販品は、何が違う?

美容室の棚に並ぶシャンプーと、ドラッグストアのシャンプー。何がどう違うのか、はっきり説明できる人は意外と少ないものです。ヘアケア商品の開発会社をやってきた立場から、売り方・つくり方・選び方の違いを、できるだけ正直にお話しします。
こんにちは。サロニー編集部の渡井です。水曜日は、美容業界の「裏側」を、作り手の目線でお話ししています。
第2回のテーマは、よく聞かれる質問です。「美容室で売っているシャンプーと、ドラッグストアのシャンプーって、何が違うんですか?」
私は長いあいだ、ヘアケア商品をつくる会社をやってきました。美容室向けの商品も、店頭で売られる商品も、どちらにも関わってきたので、この質問にはつい力が入ってしまいます。
先にお伝えしておくと、この記事は「サロン専売品のほうが上です」という話ではありません。どちらにも、そうなっている理由があります。その理由が分かると、自分に合うものを選びやすくなる。今日はそこまでお話しできればと思っています。
「専売」とは、売る場所を決めているということ
まず言葉の意味からです。
サロン専売品とは、メーカーが「美容室を通して売る」と決めている商品のことです。中身の決まりで分けた呼び名ではなく、売り方で分けた呼び名なんですね。
シャンプーやトリートメントは、法律の上では、サロン専売品も市販品も同じ「化粧品」(一部は「医薬部外品」)の決まりの中でつくられています。どちらかだけが特別な基準でつくられている、ということはありません。
では、なぜわざわざ売る場所を決めるのか。そこに、つくり方の違いがつながってきます。
誰が選ぶかで、つくり方が変わる
商品をつくるとき、私たちが最初に考えるのは「誰が、どこで、どうやって選ぶか」です。
ドラッグストアの棚に並ぶ商品は、お客さまが自分で手に取って選びます。店員さんが一人ひとりの髪を見てくれるわけではありません。ですから、初めて使う人でも失敗しにくく、多くの人にとって「ちょうどいい」ところを狙ってつくります。香りやパッケージで、ひと目で違いが伝わるようにするのも大事な仕事です。
一方、サロン専売品は、美容師さんがお客さまの髪をさわって、見て、すすめることが前提です。そのため、「くせが強くて広がる人向け」「カラーを繰り返して傷んだ人向け」「細くてボリュームが出にくい人向け」のように、悩みを細かく分けた商品をそろえやすくなります。
開発の打ち合わせでも、この違いはよく出ました。美容室向けの商品では、「この髪質の人には合うけれど、この髪質の人には重すぎる」という尖った設計も、美容師さんが選び分けてくれるなら成り立ちます。店頭向けの商品で同じことをすると、合わない人が手に取ってしまい、「使ったら髪がべたついた」という声につながりやすいのです。
どちらが優れているというより、「選ぶ人が誰か」に合わせて、狙う的の大きさが違う。私はそう説明しています。

値段の違いは、どこから来るのか
サロン専売品は、市販品より高いことが多いですよね。ここも気になるところだと思います。
値段は、中身の原料だけで決まるわけではありません。容器、運ぶ費用、お店の取り分、広告、販売する人への説明など、いろいろなものが積み重なっています。
市販品は、たくさんつくって全国のお店に並べることで、一本あたりの費用を下げやすい商品です。そのかわり、テレビや雑誌、店頭のポップなど、知ってもらうための費用がかかります。
サロン専売品は、つくる量が市販品ほど多くないことが多く、一本あたりの費用は下がりにくくなります。広告の代わりに、メーカーが美容師さん向けに勉強会を開いたり、使い方を説明したりする手間もかかります。
ですから、「高い=原料が高い」とは限りませんし、「安い=中身が劣る」とも限りません。ここは、作り手として正直にお伝えしておきたいところです。
市販品も、ずいぶん進化しています
私が仕事を始めたころにくらべると、市販品の質はずいぶん上がったと感じています。
以前は美容室向けの商品にしか使われていなかったような考え方や原料が、市販品にも広がってきました。髪質や悩み別に分かれた商品も、店頭でたくさん見かけるようになりました。
市販品で髪の調子がよいなら、無理に変える必要はありません。これは、サロン専売品をつくってきた私が言うのも変かもしれませんが、本心です。
逆に、「いろいろ試したけれど、どれもしっくりこない」「美容室帰りの髪の感じが、家では再現できない」という方は、一度、美容師さんに相談してみる価値があります。
サロン専売品がいちばん生きるのは
サロン専売品のよさは、商品そのものより、美容師さんが自分の髪を見て選んでくれることにあると、私は思っています。
美容師さんは、カットやカラーのときに、髪の太さ、くせ、傷み具合、頭皮の状態を手でさわって確かめています。そのうえで「この髪なら、これくらいのしっとり感がいい」と選んでくれる。これは、棚の前で一人で迷っているときには、なかなか手に入らない情報です。
もうひとつ、使い方を教えてもらえるのも大きいところです。同じシャンプーでも、泡立て方や流し方、トリートメントをつける量や場所で、仕上がりは変わります。開発の現場では、「いい商品でも、使い方がずれると良さが出ない」という話を何度もしてきました。

ネットで買うときに、気をつけたいこと
最近は、サロン専売品がインターネットで買えることもあります。便利なのですが、作り手として気になることがあります。
メーカーが美容室を通して売ると決めている商品が、どういう経路でネットに出ているのか、買う側からは分かりにくいことがあります。保管の状態や、つくられてからの時間が分からないこともあります。メーカーによっては、正規の取り扱い店以外での販売について、注意を呼びかけているところもあります。
ネットで買うのがすべて悪いわけではありません。ただ、初めて使う商品は、できれば美容室で相談してからにすると、合わなかったときの失敗が少なくて済みます。気に入ったものが決まってから、買い足しの方法を担当の美容師さんに聞いてみるのもよいと思います。
自分に合うものを選ぶ、三つのヒント
最後に、サロン専売品でも市販品でも使える、選び方のヒントをまとめます。
ひとつ目は、悩みをひとつに絞ることです。「広がり」「ぱさつき」「ボリューム」「頭皮のべたつき」など、いちばん困っていることを一つ決めると、選ぶものがぐっと絞れます。全部に効くものを探すと、どれも中途半端になりがちです。
ふたつ目は、二週間くらいは続けてみることです。シャンプーを変えた直後は、前のものとの違いで、きしみや重さを感じることがあります。一回で判断せず、少し様子を見てください。ただし、かゆみや赤みが出たときは、すぐに使うのをやめてください。
三つ目は、美容室でひと言聞いてみることです。「家では何を使えばいいですか」と聞かれて、困る美容師さんはいません。買わなくても大丈夫です。今使っているものをそのまま続けてよいかどうか、聞くだけでも意味があります。
作り手として、いちばん伝えたいこと
商品をつくる側にいると、「この一本で全部解決します」と言いたくなる気持ちも、正直あります。でも、髪は一人ひとり違いますし、季節や年齢でも変わっていきます。
だからこそ、自分の髪を知っている人に相談できる場所があることが、いちばんのヘアケアだと私は考えています。サロニーをつくった理由の一つも、そこにあります。
静岡にも、髪の相談にていねいに乗ってくれる美容室がたくさんあります。次に美容室に行くときは、ぜひ「家でのケア」の話もしてみてください。
