エディターコラム
秋の抜け毛は、夏の疲れから

秋になると、シャンプーのときの抜け毛が気になりませんか。夏に受けた紫外線や冷房、食欲の落ちた食事が、少し遅れて髪に表れるといわれています。食と香りの目線から、秋の頭皮をいたわる暮らしのヒントをまとめました。
はじめまして。サロニー編集部の村上ゆきです。毎週金曜日に、食べるもの、香り、暮らし方から、髪や肌を内側から整えるヒントをお届けします。
私はもともと健康食品の会社で働き、その後は自然食の世界に身を置いてきました。精油(エッセンシャルオイル)のインストラクターの資格も持っています。「何を塗るか」と同じくらい、「何を食べて、どう過ごすか」が髪や肌に表れる。そんな場面を、これまで何度も見てきました。
第1回は、ちょうど今の季節の話です。
秋は、髪が抜けやすい季節
10月に入って、シャンプーのときや、朝起きたときの枕元の髪が、なんだか多いと感じていませんか。
実は、秋は一年の中でも抜け毛が増えやすい季節だといわれています。髪には生え変わりのサイクルがあり、毎日ある程度の本数が抜けるのは自然なことです。ただ、そのサイクルは季節の影響も受けていて、夏の終わりから秋にかけて、抜ける本数が増えると感じる方が多いのです。
その理由としてよく挙げられるのが、「夏の疲れ」です。髪は、抜けるまでに少し時間がかかります。夏のあいだに頭皮が受けた負担が、少し遅れて、秋になってから表れる。そう考えると、今の時期の抜け毛は、夏の過ごし方を映した鏡のようなものかもしれません。
夏のあいだ、頭皮に起きていたこと
夏の頭皮は、思っている以上に忙しく働いています。
まず、紫外線です。顔や腕には日焼け止めを塗っても、頭皮まで気を配る方は多くありません。髪の分け目やつむじは、帽子をかぶらなければ、ほぼ一日中、日差しを浴びています。
次に、汗と皮脂です。暑い日が続くと、頭皮はべたつき、においも気になります。そこで一日に何度も洗ったり、さっぱりする強めのシャンプーを使ったりすると、今度は頭皮の乾燥を招くことがあります。
そして、冷房です。外の暑さと室内の冷えを行き来するうちに、体は知らないあいだに疲れをため込みます。体が冷えると、頭皮のすみずみまで血液が届きにくくなる、ともいわれています。
最後に、食事です。夏は食欲が落ちて、そうめんや冷たい麺、アイスや冷たい飲み物で済ませてしまいがちです。手軽でおいしいのですが、続くと、髪の材料になる栄養が足りなくなります。
髪は、食べたものからできている
髪の主な成分は、ケラチンというたんぱく質です。つまり、髪をつくる材料は、毎日の食事でとるたんぱく質から来ています。
ただ、体はとてもよくできていて、とった栄養は、命に関わる内臓や筋肉から優先して使われます。髪や爪は、どうしても後回しになりがちです。食事が偏ると、まず髪や肌に表れやすいのは、そのためです。
秋の髪のために、意識してとりたいのは、次のようなものです。
たんぱく質は、髪そのものの材料です。肉や魚、卵、大豆製品を、毎食少しずつ取り入れるのが理想です。夏に麺類が続いた方は、まずここを見直してみてください。
亜鉛は、たんぱく質から髪をつくるはたらきを助けるといわれる栄養素です。牡蠣や牛肉、ナッツ類に多く含まれます。
鉄は、血液に乗って頭皮まで酸素を運ぶために欠かせません。特に女性は不足しやすいので、赤身の肉や魚、小松菜やほうれん草などを意識したいところです。
ビタミンB群とビタミンCは、ほかの栄養素のはたらきを支えます。緑の野菜や果物から、こまめにとるのがおすすめです。
どれかひとつを大量にとるより、いろいろな食材を少しずつ。結局のところ、それがいちばんの近道だと私は思っています。サプリメントに頼る前に、まずは毎日のお皿の上を見直してみてください。
静岡の秋の食卓で、髪をいたわる
ありがたいことに、静岡の秋には、髪にうれしい食材がそろっています。
駿河湾の桜えびは、秋にも漁の季節を迎えます。殻ごと食べられるので、たんぱく質と一緒に、カルシウムなどのミネラルもとれます。かき揚げはもちろん、乾燥したものをごはんやお味噌汁にひとつまみ加えるだけでも、手軽にとり入れられます。
10月ごろから出回り始めるみかんは、ビタミンCのとりやすい果物です。皮をむくだけで食べられるので、忙しい朝にもぴったりです。
そして、静岡といえば緑茶。食事のときの一杯を、冷たい甘い飲み物から温かいお茶に替えるだけでも、冷えた体をゆっくり温める助けになります。
特別なものを買い足さなくても、地元の旬の食材を、あたたかい料理でいただく。それだけで、夏の疲れを少しずつ取り戻していけるはずです。
たとえば、こんな一日の食卓

「栄養のことは分かったけれど、毎日そこまで考えられない」という声もよく聞きます。そこで、無理なく続けられる一日の例を挙げてみます。
朝は、ごはんとお味噌汁に、卵をひとつ。お味噌汁には豆腐やわかめを入れ、桜えびをひとつまみ散らします。それにみかんを一個。これだけで、たんぱく質とミネラル、ビタミンCがそろいます。
お昼に麺類を食べたい日は、具を足すのがこつです。うどんなら卵や鶏肉を、そばなら鴨やきのこを。麺だけで済ませず、「たんぱく質をひとつ足す」と覚えておくと、ぐっと変わります。
夜は、魚か肉を主菜に、青菜のおひたしやきのこのソテーを添えて。秋は脂ののった魚がおいしい季節です。
おやつには、甘いお菓子の代わりに、素焼きのナッツをひと握り。食後には温かい緑茶を一杯。
どれも、特別な食材や手間はいりません。「いつもの献立に、ひと品足す」くらいの気持ちで、できることから始めてみてください。
香りで、頭皮をゆるめる

食事と同じくらい大切にしたいのが、頭皮の血のめぐりと、心のゆとりです。ここでは、精油を使った簡単なケアをご紹介します。
おすすめは、夜のシャンプーのあとの、頭皮マッサージです。指の腹で、頭皮を下から上へ、円を描くようにゆっくり動かします。爪を立てず、頭皮そのものを動かすつもりで行うのがこつです。
このとき、香りを添えると、リラックスした時間になります。たとえばラベンダーは、穏やかな香りで、一日の終わりに向いています。すっきりした気分になりたい日には、ローズマリーの香りを選ぶ方も多いです。
精油を肌に使うときは、必ず植物油(ホホバオイルなど)で薄めてください。目安は、植物油10mlに対して、精油を1〜2滴ほどです。原液をそのまま頭皮につけるのは避けましょう。初めて使う精油は、腕の内側などに少量つけて、赤みやかゆみが出ないか確かめてから使うと安心です。妊娠中の方や、肌の弱い方、持病のある方は、使う前にかかりつけの医師に相談してください。
香りは、無理に効果を求めるものではありません。「いい香りだな」と感じて、深く息を吐ける。その数分間が、張りつめていた頭皮と心を、ゆるめてくれるのだと思います。
眠ることも、髪のためのケア
最後に、いちばん地味で、いちばん大切なことを。それは、眠ることです。
髪をつくるはたらきは、体が休んでいるあいだに進むといわれています。夜ふかしが続いたり、眠りが浅かったりすると、せっかくとった栄養も、十分に生かしきれません。
秋は日が短くなり、夜が長くなる季節です。寝る前の少しの時間は、スマートフォンを置いて、温かい飲み物と好きな香りで、体を眠りの準備に向かわせてあげてください。
気になるときは、専門家にも相談を
ここまで、暮らしの中でできることを書いてきました。ただ、抜け毛には季節のほかにも、さまざまな理由があります。急に量が増えた、地肌が目立つようになった、かゆみや赤みが続く、といったときは、ひとりで抱え込まずに皮膚科を受診してください。
また、頭皮の状態は、自分ではなかなか見えません。いつもの美容室で、美容師さんに「最近、抜け毛が気になって」とひと言伝えてみるのもおすすめです。毎回髪にふれている人だからこそ、気づけることがあります。
頭皮をじっくりほぐしてもらえるヘッドスパも、秋の頭皮をいたわる時間として、取り入れてみてはいかがでしょうか。夏をがんばった自分へのご褒美に、ぴったりだと思います。
